完結したみたいですね、『ゲーム・オブ・スローンズ』。
ご存知ない方のために簡単に説明すると、『ゲーム・オブ・スローンズ』とは、ジョージ・R・R・マーティンというドワーフみたいな風貌をしたアメリカ人のおっちゃん(というより2019年7月現在で70歳なのでどちらかというとおじいちゃん)小説家のダークファンタジー小説『氷と炎の歌』を原作とした米国のテレビドラマシリーズです。
ドラマはアメリカ国内だけで視聴者が3000万人を超えたり、世界184か国で放送されていたりとまあ、これだけで人気っぷりが伝わってくるほどの超人気テレビシリーズなのです。
日本ではAmazonプライム・ビデオなどで見ることができます。
『ゲーム・オブ・スローンズ』シーズン1(字幕版)|Amazon Prime Video
ドラマの放送が開始されたのは2011年。
・膨大な数の登場人物
・壮大なプロット
・中世を思わせる架空の世界のため衣装や小道具大道具類を用意するのが大変そう
・ドラゴンなども出てくるので制作が大変そう
・これらすべてひっくるめてお金がかかりそう
ということもあって、放送開始前までは「映像化は不可能!」みたいなことをいわれていたようです。
しかしそこは米国。それとCG全盛時代。巨大資本と技術力でもって不可能を可能にすることができたというわけ。
そしてドラマは全8シーズンをもって2019年に完結しました。
目次
私が『ゲーム・オブ・スローンズ』を見られていない3つの理由
そんな『ゲーム・オブ・スローンズ』(以下GOT)、実は私、まだぜんぜん見られていません!
今のところ(2019年7月現在)見終わったのはシーズン2の第3話まで。この話が最初に放送されたのは2012年4月のことなので、そのときから時間が止まっているわけです私の中では。
しかしなぜそんなに見るのが遅いのか? ファンの皆様からは「早く見ろよ」というお叱りの声が聞こえてきそうですがそれにはちゃんとした理由があります。
べっちー
理由1. 腰を落ち着けて見たいから
まずひとつめの理由。見るなら腰を落ち着けて見たいから。
GOTのような壮大な物語、このような物語のことをサーガというのですが、サーガを見るにはじっくりと腰を落ち着けて見たいと思う男なんですよ私。
世の中には“ながら見”なんて言葉があってですね、食事をしながらだったりスマホをこねくり回しながらでもテレビを見ることもできますが、GOTみたいなサーガをですね、私は“ながら見”で見たいとは思えないのですよね。
だってもったいないじゃないですか。
しかもドラマの内容的に食事中にはふさわしくないようなシーンや、家族で見ていると気まずくなるようなシーンが盛りだくさんだったりするので、このことも“ながら見”回避の一躍を担っているというわけです。
それと子どもが生まれてからというもの、というより子どもが大きくなってきてからというもの、この子の就寝時刻が夜9時だったり10時だったりして、テレビをゆっくり見ている時間がなかなかとれないのも腰を落ち着けられない理由だったします。
理由2. 好きなものは後にとっておくタイプだから
ふたつめの理由は、録画している番組があってそれを先に見たいから。
優先順位でいうとGOTのほうが私にとって優先度は上です。
でも優先度が上のほうからでなく、下のほうから見て消費したいと思ってしまうのが私のよくないところ。好きなものは後にとっておくタイプ。まあ一種の貧乏性ですね。
だからGOTを見るのをつい先送りにしてしまうのです。
理由3. 『氷と炎の歌』がおもしろすぎるから
みっつめの理由。これが最大の理由かつこの記事でもっとも言いたいことです。
その理由はタイトルのとおり、GOTの原作本である『氷と炎の歌』がおもしろすぎて、改めてドラマを見てもあまり入り込めずにドラマを見る気がだんだんとなくなりつつあるからです。
GOTの原作本『氷の炎の歌』を読んでみて。長いけど
ドラマのファンからすると、「なに言ってるの? GOTを見ないなんて人生損してるよ!?」とお叱りを受けそうです。
でも私からすると原作本をまだ読んだことのないドラマファンの方に申し上げたい!
「『氷と炎の歌』を読まないと人生損してるよ!」と!
……でも「人生損してる」は言い過ぎかも。世の中には読書が苦手という方もけっこういますからね。
それにこの『氷と炎の歌』、長いんですよ。ひたすら長い。長いから読書好きな人からも敬遠されそうな雰囲気が漂ってます。
全8シーズン全73話で完結したGOTもそれなりに長いですが、原作本はドラマではカットされているようなシーンもあったりして、さらに輪をかけて長いです。
原作本は全7部の予定(まだ完結してない…)で、各部は書籍やKindleで次のように発売されていますが…
● 第1部【七王国の玉座】上巻 下巻
● 第2部【王狼たちの戦旗】上巻 下巻
● 第3部【剣嵐の大地】上巻 中巻 下巻
● 第4部【乱鴉たちの饗宴】上巻 下巻
● 第5部【竜との舞踏】上巻 中巻 下巻
● 第6部【冬の狂乱(仮)】(未発表)
● 第7部【A Dream of Spring】 (未発表)
2019年現在でぜんぶで12巻が発売されていて、1巻あたり700ページ前後もある大ボリューム。
書籍はいくつかの章立てによって構成されていますが、ひとつの章を読むのに私の場合だと30~40分かかるのがあたりまえです。
読むのにかかっているこの時間ですが、私は小説を読むときは、物語に入り込むためにじっくりと精読したい派の人なので時間がかかっているだけかもしれません。
でもビジネス書などの実用書はけっこう速く読めるので、世にいう『遅読』の部類ではなく自分では一般的な速度だと思っています。
しかも当然ですが1日のうちすべての時間を読書に当てられるわけではありません。私だってなにかと忙しい現代人なので。読めても多いときで1時間くらい。だから1日で読めるのはせいぜいひとつかふたつの章だけ。
読書できない日もあったりするので、1冊を読み終えるのに1か月もかかるなんてこともザラです。
ドラマだと見ているだけで勝手に物語が進んでいきますが、小説だと自分で読まないとどうしようもないので、上述したようなことも含めてなかには「そんな労力かけたくない」と思ってしまう人がいても無理はありません。
GOT熱が冷めてきて思い出したハリポタショック
それにしても私はなぜ『氷と炎の歌』を読むことには熱中し、それに反比例するようにGOTの熱が冷めてきてしまっているでしょうか。これを考えてみました。
これを考えたときに真っ先に思い出すのが『ハリポタショック』です。
「ん? ハリポタショック? なにそれ?」と思いましたよね?
ハリポタショックとは『ハリー・ポッターショック』の略語です。私が勝手につくった造語です。
ハリー・ポッター(以下ハリポタ)も同じファンタジーだから?……ではありません。
ハリポタシリーズの劇場版第1作目『ハリー・ポッターと賢者の石』が公開されたのは2001年。原作本はこの映画の公開からつい4年前に刊行されたにもかかわらず世界的ヒットを飛ばしており、映画は満を持した形で公開されました。
私はこのとき原作未読だったため、人気なハリポタだからまずは「映画だけ見てみよう」と思い、劇場ではなくレンタルで観賞したのを覚えています。
しかしそれを見た感想は……「なにこれめっちゃつまんねぇ」でした。
そのため私のハリポタ熱は上がることなく、原作はずっと未読、映画の続編をひとつも見ることなく今に至っています。これが私のハリポタショックです。
後年になって原作本を読んだことのある妻にこの話をしたところ、私がこう思ったのも仕方がないことだとわかりました。
なぜならハリポタの映画は原作本のダイジェスト版みたいな内容とのことだから。
妻の話を総括すると、「映画版は原作のところどころがカットされているため場面のつなぎが無理やりで、映画を見ただけでは内容がわからない。映画は原作を読んだことのある人だけが楽しめる」とのこと。
長編小説を映画化するときの難問ですよね。どのシーンを映像化し、どのシーンをカットするかということは。
映画は尺(上映時間)がだいたい決まっているので、原作本のページ数が長ければ長いほど原作からカットせざるを得ないシーンがたくさん出てきます。
ハリポタシリーズも原作1作品あたりのボリュームはけっこう大きめなのでカットされたシーンも多いはず。
これにより映画だけを見た私は違和感をおぼえ「つまんねぇ」という評価を下したのでした。
GOTとハリポタシリーズの相違点
GOTも映画化したらハリポタシリーズと同じかそれよりもひどいことになっていたでしょう。
しかしハリポタ第1作公開から数年が経ち、映像化に関する潮目が変わったとある出来事が米国で起こりました。
それが、2007年から2008年にかけて起こった全米脚本家組合ストライキです。
参考 2007年-2008年全米脚本家組合ストライキWikipediaストライキの内容については興味のある方はウィキペディアなどを読んでいただくとして、この出来事によって映画クリエイターたちが映画制作からドラマ制作にシフトしていきました。
そのため、それまではGOTのような大スペクタクルでお金がかかる作品は映画で制作するのが常識でしたが、このストライキをきっかけにドラマでも制作されるようになったのです。
こうしてGOTも1シーズンあたり6~10話、全73話で映像化されたのでした。ストライキが怪我の功名となったのですね。
私がドラマ『ゲーム・オブ・スローンズ』で物足りないと感じるところ
ハリポタのことから話が関係なさそうな方向に進んでいます(笑)
とにかくいずれにしても映画化ではおそらく人気にはならなかったであろうGOTですが、ドラマ化したことにより世界的な人気を博することになりました。
これが言いたくてここまで長々と語ってきたのですが、GOTの原作本『氷の炎の歌』を読んでからドラマ『ゲーム・オブ・スローンズ』を見ると、私にはどこか物足りなさを感じるんですよね。
映画よりも尺が長いドラマだけれど、どうしたって原作のどこかをカットしたり、脚色しなければならないところが出てきてしまいます。
予算と時間が無限にあるわけではないのだからそうせざるを得ないのは理解できます。でも、頭では理解しつつも本心では物足りなさを感じてしまうんですよねぇ。
「原作本ではここのところはもっと丹念に描かれていたけど、ドラマだとものすごくサラッと描かれちゃってる」みたいなところが気になってしまうんですよねどうしても。
例を挙げると、この物語の主人公のひとりであるアリア・スタークが“壁”に向かおうとする道中でのさまざまなシーン。原作ではかなり丹念に描かれているこのシーンですが、ドラマだと淡白です。「えっ、もうこの場面? えっ、もう終わり?」みたいな気にさせられます。
それと、これは映像と文字の表現の違いによるところですが、原作本ではそれほど重要ではないけれど、見せやすいからという理由で映像化したのだろうかと思えるシーンもドラマにはけっこうあります。
わかりやすいのが濡れ場のシーン。例を挙げると、“リトルフィンガー”ことピーター・ベイリッシュ公というキャラクターがいるのですが、彼は王都キングズ・ランディングの大蔵大臣であるとともに城下町で娼館を営んでいたりする策士です。彼が営むこの娼館でのシーンは原作ではそれほど濃く描かれているわけではありませんが、ドラマだとそれはもう濃厚です。
娼婦たちが行為の演技の練習をするシーンがドラマでは何度かあります。家族と一緒に見ていると気まずい思いをすること間違いなしですが、原作にはそういったシーンはあったかどうかも忘れているほどなので「このシーン、別にいらなくね?」と思ってしまうんですよね。
しかし、こういった『わかりやすい』シーンを入れずに原作通り忠実に映像化しようとすると、権謀術数を頭の中で巡らせたり、思い悩んだり悲嘆に暮れたり、極悪または非道な場面しか描けなくなってしまうので、見ているほうは気が滅入るかもしれませんね。
明るくホッと息をつくような場面なんて、この物語にはほぼないですから。
原作本とドラマの両方を楽しむためにできること
原作のおもしろさを上回る映像作品はごく一部を除いて世にあまりありません。
でもそれは仕方のないこと。原作は作者の頭のなかで繰り広げた出来事を文字で自由に表現できるのに対して、映像化をするとなると原作があればこれにある程度合わせなければならないという制約はあるし、技術的な限界もありますし、お金をかける必要もあります。
だから映像作品に原作のすべてを求めるのはどだい無理なんです。
私たち読者兼視聴者ができる、もっとも良い対処法が割り切りです。
「原作には原作のこのような良いところがあり、この原作の映像作品にはこのような良いところがある」という割り切り。ポジティブな考えともいいましょうか。
でも私のように割り切りをうまくできないタイプの人もいます。
べっちー
こういうタイプの人は映像作品を最後まですべて見てから原作本に手を出しましょう。こうしたほうが粗探しをしないで済むので、精神衛生的によいでしょう。
だからドラマ『ゲーム・オブ・スローンズ』が完結した今は、ドラマをすべて見終わった方が原作本に手を出す絶好の好機だったりします。
「ドラマを見終わって、長い本を読むのが苦ではないから読んでみたい!」と思えるそこのあなた。そう思えるならばGOTの原作本『氷と炎の歌』をぜひ読んでみてください。
GOTよりもさらに濃密な世界が待っていますから。